過去問題集による対策の有効性と著作権と。
最近,過去問を削除する動きが強まっています。www.yomiuri.co.jp
Twitterでも触れましたが弊社も例外ではありませんでした。
これはひどい。弊社も内部データベースとして過去問のpdfを蓄積してきたが、今年になって全部消えたのはもしかしてこのせい。 / “旺文社、過去問をPDF保存…外部指摘受け削除 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)” https://t.co/M4kQc7ObyV
— にくきゅう⊿ (@maimai_nogi) 2016年11月11日
もちろん過去問の著作権は出題学校に帰属するため,無断でコピーするのは有料参考書を無断でコピーするのと同様に違法です。
試験対策として過去問演習は有効なのだが…
入試が近づくと過去問演習が始まります。実際に出題された「傾向」を実感することができ,また演習した結果発見された自分の弱点を克服するきっかけになります。過去問演習は入試対策においては不可欠なものであります。
過去問はまっとうに「購入」すればいい
本屋に行けば過去問を買うことができます。そう,それだけのことです。過去問の有用性を認め,その価値を認め,購入。買ってしまえばあとは自分の好き放題,というわけです。
しかし,例えば個人塾や中小学習塾はそうはいかないのが実情ではないかと思います。過去問対策は,受験生の志望校を中心に,時には志望校ではない学校の過去問を解くことも必要になります。また過去5年分を演習できたところで,第一志望校であればさらに過去の問題を演習する必要があります。多くの過去問が必要なのです。すべての過去問をそろえるだけの経済的体力がある塾はそう多くないのではないかと思うのです。
定期テストの過去問を配布するのも同様に違法
特に個人経営の塾は「地元密着」を謳いますから,近隣中学校の過去問をストックすることはよくある話です。しかし,公立中学校とはいえ著作権は学校側にあります。塾が勝手に生徒から定期テストを借りてコピーしストックし,それを商用に利用することはあきらかな著作権違反です。
著作権法の第36条では,「営利行為として試験問題を複製するには,著作権者に補償金を払うか,著作権者の承諾がなければならない」ことになってます。
公立中学校の過去問は販売していない
しかし本屋で買うことができる過去問と,公立中学校の過去問は,その性質を大きく異とします。地元の中学校の過去問は販売していません。試験対策としての過去問演習はとても有効であることをさきほど申し上げました。それゆえ個人塾は過去問をストックするのです。
過去問の扱いはもっと柔軟にするべき
街の個人塾では「定期テスト対策します!」と大々的に宣伝していますがその実情はストックされた過去問の演習と傾向分析からの問題演習なのです。下手すれば過去問を配るだけで「試験対策だ!」と豪語している塾もあります。
学校側はこの実情を把握しています。把握していながらも何もアクションを起こしません。違法であるということがわかっているのに、です。別に法を犯していても学校側に実害が加わるわけではないし、上で述べてきたような塾の実情をある程度は理解しているからです。
世間の目が公立中の過去問配布を許容するのであれば,冒頭の記事にもある旺文社の過去問や,弊社の過去問利用についても,もっと柔軟に対応する余地があるのではないかと思います。使用側の責任に終始するのではなく,運用されている法律の妥当性についても議論されるべきと考えます。
受験界の「ブラックジャック」を待ちながら
そもそも紙ベースでの保存は合法だがPDF 化したら違法とはどういう理屈なのでしょうか。そして本屋で販売されているような学校の過去問が紙ベースでストックされていたとして、学校側の「実害」はどのようなものでしょうか。
著作権者が承諾さえすれば過去問を配布することはできます。最近では学校説明会で湯水のごとく過去問を配る学校も少なくありません。いっそのこと著作権フリーの入試問題を作成し、多くの受験生がその問題で入試対策すれば、あわよくば受験者・入学者が増えれば学校側のメリットも増えます。
権利と現実のバランスは難しいですね。実情に即した法整備をお願いしたいものです。